(2018/01/12更新)

東京都三鷹市にある「三鷹市SOHOパイロットオフィス」。
このオフィスができたのは平成10年。今年で20年目を迎えるこのオフィスは、まだインターネットが珍しい時代から、SOHO事業者や創業者をサポートしてきました。

今回は、「三鷹市SOHOパイロットオフィス」を運営している、株式会社まちづくり三鷹の富樫 孝之氏に、オープン当初のお話や、オフィスの魅力について伺いました。

三鷹市が抱えていた課題から生まれた「三鷹市SOHOパイロットオフィス」

—まずは、三鷹市SOHOパイロットオフィスの概要について教えてください。

三鷹市SOHOパイロットオフィスは、遡ること19年前、平成10年12月にオープンしました。当時はSOHO、シェアオフィスやコワーキングスペースという言葉もまだない時代でしたが、その時から三鷹市ではSOHO事業者や創業者の支援をしてきました。

そもそも、三鷹市と私たちがなぜSOHO支援やこの施設を開設したのかと言いますと、三鷹市は戦時中、飛行機などの軍需産業で栄えた地域でした。しかし、戦後は急速にベッドタウンとして発展し、その結果、土地用途の9割が住居に制限され、工業・産業は非常に発展しづらい状況になってしまいました。

例えば「工場誘致で製造業に力を入れよう!」と思っても、住む街としての環境が悪化するためできません。既存の製造業も徐々に肩身が狭くなり、地価も上がり、市外へ撤退してしまう状況でした。

しかし、住民税頼みの市の税収は、やがて少子高齢化が進み税収減少、市民活力の衰退が見えています。また、当時は景気も悪く中心市街地の空洞化による空き店舗・空きオフィスが多く、その活用も課題となっていました。

一方で、当時Windows95を始めとしたパソコンやインターネットの普及が始まり、三鷹市域では、CATV会社による光ファイバーを用いたインターネットサービス(10MBPS)が始まりました。今では当たり前かもしれませんが、当時はおそらく日本で最速のネット環境が三鷹市内に整っていたのです。

こうした都市の制約条件・時代背景やプラス要素の中から、「音や煙を出さない、小規模なスペースや少人数でPCやインターネットを使用したビジネスを支援し、まちを活性化する。」という構想が生まれました。

「三鷹市SOHOパイロットオフィス」は、この構想を具体化し、SOHO事業者を支援する施設としてスタートしました。形態は今でいう「シェアオフィス」ですが、当時はその言葉もなく、三鷹の産業・まちの活性化という広い概念のもと、開設されました。

—それぞれの設備について教えてください。

2階と3階がオフィススペースになっています。

2階の特徴は、開設当初、フロア中心に休憩スペースを用意したことです。これによって、同じフロアにいる方同士の交流が生まれ、繋がりができました。当初からSOHO事業者や創業者同士の横の繋がりを意識しています。

2階には受付や会議室を設置しています。
今のシェアオフィスだと当たり前かもしれませんが、平成10年から運営しているので、「創業者はどういうことに困りがちなのか?」「どのようなものを必要としているのか?」というノウハウは、おそらく私たちや受付スタッフが一番よく知っていると思います。会議室利用の際、受付を通してお客様をご案内できるのも、入居者の方から好評です。

ちなみに、当初からこの受付で働いていたスタッフが、創業者が困っていることを解決する事業を立ち上げました。受付スタッフ一人ひとりが、創業者の問題を解決するためのノウハウを熟知しているというところが強みです。

一方で、3階のオフィスはセキュリティ性の高い完全個室型オフィスにしています。
プライバシーに非常に気を遣うビジネスをやっている方には、こちらのオフィスがオススメですね。

魅力は、歴史に裏付けされたノウハウの深さ

—設備を考えるうえで意識したポイントはありますか?

先ほど申し上げたことと少し被りますが、入居者同士の繋がりを意識しました。
当初、SOHO事業者はコミュニケーションをとる機会が少ない人が多い印象でした。そこで、交流スペースを作り、一緒に仕事をしている仲間の存在がわかるようにしました。孤独を感じていた事業者や創業者にとって、これがすごく重宝されました。

今は個人情報などのセキュリティにも対応しなければいけない時代ですので、セキュリティ性の高いオフィスのニーズが高まって来ました。3階のオフィスは、そのような方のために設置しています。

—三鷹SOHOパイロットオフィスの魅力は、どの点にあると思いますか?

受付スタッフの気配り、ノウハウの多さが魅力です。創業して間もない人たちにとっては、何もかもが不安に感じると思います。そのような状況に受付の人たちがスッと寄り添って一緒に問題や悩みごとの解決策を探してくれます。

さらに、東京都によるインキュベーション施設に認定されていることも魅力の一つです。
東京都認定インキュベーション施設とは、民間事業者などによる創業支援施設の事業計画のうち、一定の基準を満たしたものとして東京都に認定された施設のことです。

ちなみに、東京都中小企業振興公社が行なっている事業で「創業助成事業」というものがあります。助成対象者に選ばれると、対象経費の2/3(限度額300万円)を助成してくれる、というものですが、その条件の一つに「東京都が認定したインキュベーション施設に入居すること」があります。つまり、三鷹SOHOパイロットオフィスに入居すると、「創業助成事業」の申請に必要な条件の一つを満たすことができます。

—補助金や助成金の相談も受けているのでしょうか?

そうですね。ですが、私たちはあくまで「つなぎ役」です。補助金や助成金などの専門家ではありませんが、「このような相談をしたい」という創業者の悩みを聞き取って、適切なところを紹介することができます。このパイプの広さ・多さ・太さが当社やこのオフィスにはあると思います。

—ちなみに、入居者同士でビジネスが発生したことはありましたか?

あります。三鷹SOHOパイロットオフィスにはデザイナーの方も入居していまして、入居者の事業チラシのデザインなどの受発注がありました。

私たち「まちづくり三鷹」や「三鷹市」から仕事を依頼することもあります。
実際に、このオフィスの入居者募集チラシは入居しているデザイナーさんに制作をお願いしました。

—最後に、創業者の方に一言メッセージをお願いします!

三鷹市SOHOパイロットフィスは、三鷹市の課題や背景から生まれた、歴史ある施設ですし、リニューアルを重ね、三鷹駅から非常に近い利便性の高い施設です。入居者の方も、多様な業種で年齢層も幅広くいらっしゃいます。なので、若い方でもシニアの方でも、すんなり溶け込める施設だと思います。

都心にあるシェアオフィスのような高級感は乏しいかもしれませんが、居心地のいい環境の中でビジネスをやってみたい方にオススメです。
私たち「まちづくり三鷹」が、創業に関するサポートを様々な団体とやっておりますので、それを上手に活用していってくれたら嬉しいです。

三鷹SOHOパイロットオフィスの詳細は、こちらをご覧ください。

(取材協力:株式会社 まちづくり三鷹 冨樫 孝之)
(編集:創業手帳編集部)