創業手帳webで紹介した通り、北九州市は現在、“日本一創業しやすい街”と言っても過言ではないほど、創業シーンが盛り上がっています。
それを支える重要な拠点が、市内にある3つの“尖った”コワーキングスペースです。
今回は、北九州市を盛り上げる3つのコワーキングペースの特徴をまとめます。
(2015.12.16更新)
北九州のものづくりの拠点:fabbit
「工業のまち」として栄えた北九州市。その新しいものづくりを支える拠点が、fabbitです。
fabbitは、小倉駅北口のあるあるCity2号館の中にあるシェアオフィスを軸として、多様なアクティビティを内包する複合施設です。
もとはトリマー養成の専門学校だったという広い敷地には、3Dプリンターなどのファブリケーション機材が揃った工房、「fab room」や、起業やデザイン等、幅広い蔵書のライブラリ、ランチやカフェが利用できる「Breaq」、泡モノばかりを取り揃えたBAR「awabar」などが併設されており、「学ぶ・集う・つくる」の三拍子で同市の新しいものづくり文化の創造を担っています。
事実、fabbitでは子供や女性などを対象にしたイベントも開催され、最新設備と新鮮なアイデアを組み合わせた新しい試みが行われています。
ファブリケーション※の略である「fab」と、デジタルコンピュータの最小単位「bit」から名付けられたfabbit。
fabbit誕生のきっかけとなった、北九州で行われたワークショップ「FabIT Summit」には、MOVlDA JAPANの孫泰蔵氏をはじめ、DMM.make AKIBAの立ち上げにも携わった株式会社nomad代表取締役の小笠原治氏など、新しい時代のものづくりをリードする面々が名を連ねました。
これだけのメンバーが一堂に会した背景にあるのは、100年間の絶えまないイノベーションの歴史に裏付けされた、工業のまち・北九州のポテンシャル。
街の周辺に無数に立ち並ぶ町工場には、ものづくりの超一流の機材が揃っています。それらにアクセスできる体制さえ整えば、fabbitでプロトタイプをつくり、難しい加工や量産体制を町工場で行う、という一貫したフローが完成します。
現在、その体制が少しずつ整ってきているとのこと。
世界に誇る日本の技術力が、ものづくり起業家のアイデアと融合する。その瞬間が、fabbitから生まれようとしているのです。
※ファブリケーション:組み立て工場などの意
コワーキングスペース”原理主義”:秘密基地
こちらの記事でも紹介した通り、コワーキングスペースの魅力は、「入居者や関係者によるコミュニティ」にあります。そのコミュニティを徹底的に追及しているのが、秘密基地です。
オーナーの岡氏は建築士で、イギリスでシェアハウスを経営していた経歴があります。
空間デザインのプロが、「ヒトが集まるプラットフォーム」に必要なノウハウを余すことなく注ぎこんだオフィスは、セミナーや交流会に使える大空間のコワーキングスペースと、建物の奥に行くほど静寂性が保たれる独自の間取りが特徴です。
更に特徴的なのは、「閉じないコミュニティ」という岡氏独特のコミュニティ観です。
岡氏によると、コミュニティはある程度成熟すると、新しい人が加わることを避ける性質があるそうです。例えば小学校。クラスの友達の輪に転校生が加わるのは難しいですよね。これが、コミュニティが「閉じた」状態です。コミュニティを成熟させながらも、それが「閉じない」ように見守り、徹底して新しい試みを起こし続ける。コミュニティの変化と成長を繰り返し、熱量を高める。そんなコワーキングの”原理主義”を貫いているのです。
「都市として成熟を迎えた北九州市の、最終的なあり様、『ランディング・ポイント』を見つけたい」
岡氏は語ります。同志が集い、混ざり、繋がり、尖りながら、北九州市のカタチを模索していく。ここは、そのための文字通り「秘密基地」なのです。
リノベーションスクールの象徴的存在:MKAGE1881
創業手帳webでも紹介した通り、北九州市の地域活性化イベントの代名詞と言ってよい「リノベーションスクール」ですが、その象徴的な施設として知られるのが、コワーキングスペース「MIKAGE1881」です。
名前の通り、市の中心部を走る「みかげ通り」に立地する当オフィスは、2012年の第二回リノベーションスクールによって誕生したオフィスで、創業手帳webでも紹介している「北九州家守舎」がリノベーション・運営に携わった初の施設です。
中に入ると、コワーキングスペースの他に7つのオフィスがあり、5階の窓からは北九州市の中心街が臨めます。
「コワーキングスペースを運営するにあたって、『どんな人たちが入居するか?』が重要だと思いました。」
北九州家守舎の遠矢氏がそう語るように、「MIKAGE1881」は、多様な知識や経験を持った人々、何か新しいモノ・コトをしたい人達が集まり、そのコミュニケーションによって新しい仕事やアイデアを生み出す、それによって街に新しい人の流れを生み出すセンターハブの役割を果たしています。
また、「MIKAGE1881」の「1881」は、ビルオーナーの松永不動産の家業であった松永家具店の創設年、1881年にちなんでとのこと。
北九州市の盛衰を100年以上見守ってきた伝統を受け継ぎながら、現在を生きる様々な人々が集い、同市の未来を造っていく。「MIKAGE1881」は、北九州市の過去・現在・未来をつなぐ架け橋のような存在、と言えるかもしれません。
(創業手帳編集部)